ド趣味の話

(2022.07.20)

以前ミクリさんに井伏鱒二『鯉』やってほしいとずっと思ってる…みたいな話したところなんだけど、本当にやってほしくて…今からその話していい?いいよ!
ここからすっごい趣味の話になる 私は日本近代文学が好き…好きな作品にメチャ偏りがあるが…


私はポケスペのミクリさんに対して謎の感情を抱いてると自負してるんだけど、『鯉』をポケスペのミクリさんにやってほしいのね
私ほんとこの作品好きで…もうほんっとメチャメチャに良くて…
そもそも『鯉』読んだことないが!?みたいな人もいると思われる
う~ん!簡単に好きな点言う?いいのそんなことしてしまって!?
駄目だな…と後で思い返したら消すね
以下作品内容のネタバレだよ 浴びたくないが~!の方は逃げて読んでから来てね

















大丈夫かな?話すよ

井伏鱒二『鯉』は、主人公の「私」が、過去に親友から預かった鯉を持て余した学生時代を思い出して回想しながら書いた「手記」で語られる文学作品でね
つまり学生時代から十幾年経った大人になった主人公が書いた、主人公が学生の時の思い出を読者は読んでる形になるんだけど

「すでに十幾年前から私は一ぴきの鯉になやまされて来た。」という文から主人公は思い出を語り始める、もとい綴り始める
親友から真っ白い鯉を譲り受けて、いろんな場所に鯉を放流したりするんだけど結局なんやかんや事情があって鯉は手元に戻ってくるし、そのことをなんだかなあと言いつつもユーモアも交えながら書いていく主人公
で、学生時代のある日、その鯉をくれた親友が死ぬのね
その親友の葬式にも出席するくらい主人公は仲が良かったんだけど、親友の死についてはほとんど手記では触れなくて、その代わりに今まで以上に鯉に執着するようになる
というか、もう鯉の話ばっかりする
親友の愛人に一回鯉預けたりするんだけど、あれは私が譲り受けた鯉だと忘れぬように!とか言っちゃう
最終的に、学校のプール(というか当時は池に近い)に放流して、その美しさにうっとりしてやっと解放された!って物語は割と爽やか~に、かつ何の話…?って感じに手記も物語自体も終わるんだけど

これって十幾年前の過去の思い出を書いてる、主人公の「手記」なのね
だから主人公の意思が文体に反映されてるところが少なくなくて、書きたくないことは書かなかったりする可能性がある…のね 語りの確実性、信頼性がそんなに高くない(不確実な語り)
親友の死について詳しく書かない主人公、その親友から譲り受けた鯉を手放せないことを歯がゆく思いながらも執着する主人公
先行研究とか論文ですごく言われてることだから余裕があったら調べてみてほしいんだけど、この白い鯉は、主人公と親友二人の「友情の証」であり「親友との思い出」であり、一種の「形見」なんだよね…
だから手放したいけど手放せない

でね、ラストはその白い鯉が悠々と泳いでいく様を眺めて、その鯉もどこか行って見えなくなっちゃうから、主人公の中でもある意味で決別ができたのかな…と思いきや
それが手記冒頭で主人公は「すでに十幾年前から私は一ぴきの鯉に悩まされて来」てることを述べてる…のよ
鯉は二人の友情の証、かつ思い出、それに悩まされている…
つまり主人公、白い鯉が手元を離れて十幾年経った今でもメチャメチャ引き摺ってるの 親友の死を…
その親友の死を受け止められなくて、十幾年経った手記をかいている今でさえ、親友の死を知らされた時の自分の心情とか、親友の葬式の様子の詳細を書けないでいる
語れない語り…とか、語りの喪失とも言うんだけど、ショック過ぎて語れなくなってるうえ、それ以外の情報ばっかり盛り込んだ文章を書いてしまう、それこそ語りでも白い鯉を語ることばかりしてしまう

でもそんな主人公が親友との思い出を想起して綴ろうとする、受け止めようとなんとか核心を避けて書き上げたのが今回の手記でもあって…「死を思う」(メメントモリ)っていうんだけど、はじめて親友の死に向き合おうとしてる…みたいな心の動きもある…と思われる
ユーモアを交えながらも、語られない親友の死への悲しみがずーっと根底にある、そんな文学作品で…
私は…この文学作品が本当に大好き…
この概要、全然伝わってる気がしない…!!乏しいね…


それを踏まえて、私はこれをポケスペのミクリさんにやってほしいと思ってる
やってほしいよ~!!!親友の死、受け止められたようで全然受け止められなかってほしい
本当にやってほしくて、前に「ミクリさん 鯉」とかで調べたけど全然出てこなかった そらそう
別にコイキングを放流しなくていいので、最終決戦の時の様子をあんまり語れないミクリさんが見たいよ…当時のことを振り返って、他のことは鮮明に語れるのに「その時に…ダイゴが倒れて、…」しか言えないミクリさんが見たいよ~!私は屈折した感情をミクリさんに抱えている
まあみんな生き返るからそんな世界線は次元の狭間に消えるけど…

井伏メチャメチャに長生きでホント最近まで存命だった(推せるね…)から、青空文庫で読めないのよね…興味があったら図書館で借りて読んでね…短編だし気軽に読めるしすっごいオススメ
こんな薦め方していいのか?

あとは…ポケスペ関連は趣味でいうと…
坂口安吾『堕落論』は割とポケスペのダイゴさんに当てはまるところあるな…と思っているし、カガリさんとかすっごいデカダンスの人間じゃない?220話とか…江戸川乱歩『防空壕』とかの…ちょっと系統違う気もするけど、炎の美しさ云々らへんとかの心情すごくここ思い出す
ていうか『堕落論』だとルビーくんの「本当の美しさとは?」の答えに対して割と反発していってしまうかもしれない?どうなんだろう?どうなんですか?

あとは~IFかつ存在しない世界線の…ダイゴさんの仲間になる…5年前のボーマンダ事件が起きなかったルビーくんの世界線だとまず間違いなく夏目漱石『こころ』上中下ルートまっしぐらだな…と思う
これは本当に趣味!!!
「この手紙があなたの手に落ちる頃には、私はもうこの世にはいないでしょう。」してほしすぎるうえに
「実際ここにあなたという一人の男が存在していないならば、私の過去はついに私の過去で、間接にも他人の知識にはならないで済んだでしょう。私は何千万といる日本人のうちで、ただあなただけに、私の過去を物語りたいのです。」してほしすぎるよ~っ!!! 日本人じゃないけど二人とも…
ダイゴさんがゲーム本編だと手紙書いてるのもアツイ ポケスペでも書くことでしょう…到底四つ折りして懐に入れられる筈もない分量の手紙書いてよ~!ルビーくんのために…そうなってほしい…せっかくのIFをこのような結末にしてしまうのなんで?

最後にメチャメチャ推しカプへの欲望垂れ流しにしちゃった!本当に恥ずかしいんだけど~!!

そう、井伏鱒二『鯉』がオススメであるという話
大きい感情を抱えた友人関係、親友の死がトラウマになってしまって目を逸らす人間が刺さる人にはとても刺さることと思う 良いのでぜひ読んでみてね
私ももう一回読む~!